コラム

2024/12/11 コラム

就労請求権とは 事業者は労働者を働かせる義務があるのか?

はじめに

労働契約に基づき、労働者は労務を提供し、使用者(事業者)はその対価として賃金を支払います。しかし、労働者が「働かせてもらう権利」、すなわち「就労請求権」を行使できるのかどうかについては、疑問を抱くかもしれません。本記事では、特に運送業を例に、就労請求権の基本的な概念、裁判例から見た適用範囲、そして例外的に認められる場合について解説します。

Q&A

Q1. 就労請求権とは何ですか?

就労請求権とは、労働者が使用者に対して「自分を働かせるよう要求する権利」を指します。例えば、解雇や自宅待機命令が発令された際に労働者が「現実に働く機会を与えられるべき」と主張する場合に議論されます。

Q2. 労働者は常に就労請求権を持っていますか?

一般的には、就労請求権は認められていません。ただし、特定の条件下では例外的に認められるケースがあります。

Q3. 運送業ではどういった状況で議論になりますか?

例えば、自宅待機命令や配転命令に対して、労働者がその命令に反発し「元の業務に就きたい」と主張する場合に問題となります。また、タクシー運転手やトラックドライバーが停職命令後に復帰を求めるケースもあります。

就労請求権とは

労働契約は「労務の提供」と「賃金の支払い」を柱とするものです。この契約において、労働者が仕事に従事することは義務であり、使用者がその労務を受領することもまた基本的な義務です。ただし、労働契約には「就労そのものを保証する義務」は通常含まれないと解釈されています。これが、就労請求権が一般的に否定される理由です。

例えば、判例で代表的な「読売新聞社事件」では、労働契約の性質上、労働者が必ずしも現実に就労を行う権利を有するものではないことが示されています。 

就労請求権は認められる?

判例において、就労請求権は基本的に否定される傾向があります。

判例の一般的な考え方

  1. 自宅待機命令の正当性
    自宅待機命令は、就労請求権を否定する一例です。この命令が合理的な目的に基づいていれば、労働者は命令に従う義務を負います。
  2. 配転命令の有効性
    配転命令を争う場合も、労働者の就労請求権は認められにくいです。例えば、「別の業務に就くよう命じられたが、元の業務に戻りたい」という主張は、契約内容次第で否定されることがあります。

これらは、労働契約の枠組みの中で「労務の受領」よりも「使用者の経営権」が優先される場合があるためです。

就労請求権が例外的に認められる場合

一方で、特定の条件下では就労請求権が認められることもあります。

条件1: 特別な合理的利益の存在

労働者にとって就労することが特別に重要な利益をもつ場合、就労請求権が認められることがあります。

条件2: 雇用契約や就業規則の特別な定め

就業規則において、就労を求める権利が明記されている場合には、その権利が認められる可能性があります。

条件3: 裁判所による命令

例えば、違法な解雇の後に復職を命じられた場合、就労請求権が実質的に発生します。これは、労働者の権利を回復するための措置として重要です。

弁護士に相談するメリット

運送業において、就労請求権を巡るトラブルは複雑化しがちです。弁護士に相談することで次のメリットがあります。

  1. 専門的な助言を受けられる
    労働法の専門知識を持つ弁護士は、トラブルの法的解釈や判例をもとに適切なアドバイスを提供します。
  2. トラブルの早期解決
    弁護士の介入によって、労使間の話し合いや法的手続きがスムーズに進むことがあります。
  3. 裁判の準備とサポート
    就労請求権が認められるか否かを裁判で争う場合、適切な証拠収集や主張の組み立てをサポートします。 

まとめ

運送業における就労請求権の問題は、労働者の権利と使用者の経営権のバランスをどう取るかという点で重要なテーマです。一般的には否定される就労請求権ですが、例外的な条件下で認められる場合もあります。問題が発生した際には、早めに専門家へ相談することが最善の解決策です。当事務所では、就労請求権を含む労働問題に関するご相談を受け付けています。

 


 

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