コラム

2024/11/04 コラム

労働事件における取締役個人の責任追及が問題となる場合

はじめに

労働事件が発生した場合、企業のみならず、取締役個人に対しても法的責任が問われるケースが増加しています。本稿では、特に取締役が負うべき法的責任について、具体例を交えながら解説します。取締役個人が責任追及される状況や、その責任の範囲、また、経営者として取るべき対策についても詳述し、予防策を考えます。

よくある質問(Q&A

Q1. 労働事件で取締役個人が責任を問われるのはどのような場合ですか?

A1. 労働事件において、特に不当労働行為や労働環境が適切でなかった場合、取締役個人にも損害賠償責任が追及されることがあります。責任が問われるケースとしては、労働条件の改善が適切に行われなかった、過重労働を放置した、安全配慮義務を怠った場合などが挙げられます。

Q2. 取締役がどのような責任を負うことになるのでしょうか?

A2. 責任の範囲としては、不法行為責任や安全配慮義務違反に基づく責任、さらには会社法429条に基づく損害賠償責任などが挙げられます。具体的には、過失による損害が従業員に及んだ場合、その損害を補償する責任を負います。

Q3. 労働事件に備えるために、経営者ができることは何ですか?

A3. 企業としてのコンプライアンス体制の整備やリスクマネジメント、労働環境の改善が必要です。また、予防策として、弁護士に相談し適切な指導を受けることも重要です。

取締役個人の責任が問題となるケース

  1. 不法行為責任
    労働事件において、取締役個人が不法行為責任を問われることがあります。たとえば、過重労働や適切な労働環境を提供していなかったことが原因で従業員が健康被害を受けた場合、取締役は民法709条に基づき、損害賠償責任を負うことがあるのです。
  1. 安全配慮義務違反
    取締役には、従業員が安全に働ける環境を整える義務があり、これを怠ると安全配慮義務違反として責任を問われることがあります。例として、過重労働や長時間労働により従業員が健康被害を被った場合、代表取締役に対して損害賠償が認められることがあります。
  1. 会社法に基づく損害賠償責任(会社法429条1項)
    近年、労働事件でも会社法429条が適用され、取締役が責任を負うケースが増えています。これは、労働環境の悪化や過重労働の放置が、取締役としての任務懈怠と判断される場合に発生するものです。代表者は、労働環境の整備と従業員への適切な配慮が求められているのです。 

経営者が取るべき対策

  1. 労務管理体制の強化
    労働事件を防ぐために、企業内の労務管理体制を整備することが必要です。具体的には、適正な勤務時間の管理、過重労働の防止、従業員の健康管理などを徹底することが重要です。
  1. 労働環境の見直し
    長時間労働が問題になりやすい業界では、業務の見直しや分業体制の強化を検討し、従業員が健康に働ける環境づくりを進める必要があります。
  1. コンプライアンス教育の充実
    従業員だけでなく、管理職や役員に対しても労働法や安全配慮義務についての教育を実施し、職場の法令順守を徹底させることが望ましいです。
  1. リスクマネジメントの導入
    労務リスクが発生した際の対応マニュアルを整備し、事前に適切な対処法を共有することも、リスクを最小限に抑えるために役立ちます。

弁護士に相談するメリット 

  1. 法的リスクの回避
    弁護士に相談することで、取締役個人として負うリスクについて適切な助言を受けることができます。特に、労働法に詳しい弁護士のアドバイスを受けることで、企業が知らない間に労働法違反をしてしまうリスクを防ぐことが可能です。
  1. トラブルの予防策
    労働事件を未然に防ぐための労務管理や安全配慮義務の具体的な対策を立てる際にも、弁護士のサポートが有効です。弁護士は裁判例を熟知しているため、過去の事例を参考にした予防策を提案してくれます。
  1. トラブル発生時の対応
    労働事件が実際に発生してしまった場合、弁護士が法的に適切な解決方法を提案し、企業と取締役個人のリスクを最小限に抑えるためにサポートします。特に、訴訟となった場合には迅速な対応が求められるため、弁護士への相談が重要です。

まとめ

労働事件における取締役個人の責任追及は、今後も増加することが予想され、経営者としての労務管理やリスク管理が重要です。取締役は、労働環境を適切に整え、従業員に対する安全配慮義務を果たす必要があります。また、労働法に詳しい弁護士に相談し、事前の予防策やトラブル対応の準備を進めることで、企業全体のリスクを軽減し、健全な経営を目指しましょう。


 

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